2016年11月16日水曜日

この世の中で一番おいしいもの知っていますか

看護師さんが素敵なガラスの器に
氷のシャーベットをもってきてくださいました。
叔父の酸素マスクを下げて
そのシャーベットをスプーンに半分くらいのせて
口に入れてやります。
「ああ、美味しい」とくしゃくしゃの顔をさらにくしゃくしゃにして笑みを浮かべます。
この世の中で一番おいしいものは
「水」だったのです。

山登りを盛んにしていた頃
湧き水をすくって飲んだことを思い出します。
どんな飲み物よりも水が美味しく、生き返ったことを……。
叔父も全身の疲れの中で、命の水を口にするのです。

私には叔父の様子が時間を追って厳しくなるのを見ても
不思議と感情が高ぶらないのです。
だって、人間は一度はあの世というところに
旅たつのですから
そして、叔父の魂は、いつか可愛い赤ちゃんに生まれ変わって
私の前に現れるかもしれません。
もしかしたら、外国人になったり、もしかしたら
血のつながりのある人だったりするかもしれません。
私が知ることはできないけれど
きっと、きっと生まれ変わって、
今よりも、もっともっと優しい人になっていつか巡り合うかもしません。

ビハーラ病棟に流れるバイオリンの音色は
心地よくて
私は、うとうとするのです。

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