2018年3月3日土曜日

新藤兼人 監督 「愛妻物語」

昭和26年制作
新藤兼人脚本・監督
主演「乙羽信子」
新藤兼人監督の初めての作品らしい。

映画の背景は昭和17年、学徒が戦地に行く時代である。
この時代に映画を作り続けることは、とても大変な事、ましてシナリオライターで
一人前になることは、相当の困難があると想像させます。
どこからどこまでが自叙伝なのかわかりませんが
宇野重吉さんの演じるライターと新藤兼人を重ねながら観ました。

映画の中のセリフのように、この映画には少し物足りなさを感じますが、
その分ストレートに表現され、誰にもわかりやすく、見やすい映画となっていました。
長屋の二階や鴨川での魚とり、暗闇で将棋をさす、ふたりで見つめ合うなどのシーンに、
色がほしいと思ったほど、背景にこだわって撮影されたのではないだろうか。
また、口に含んだ水を霧吹きにするアイロンかけシーンにはびっくりさせられた。
こんな時代だったのかと、思わず笑ってしまいました。

ラストの妻が息絶える前に手鏡でアルバムを見つめるシーンはジーンときます。
そして、そこには
妻としての無念さと幸せの両方が映し出されていたように思う。

悲しく切ない結末なのに、不思議と涙があふれなかったのはなぜだろうか。
と考えてみた。この映画には辛さの中にあふれんばかりの愛が
あったからではないだろうか。乙羽信子さんの笑顔と女優としての
感性に勝るものはないような気がした。

戦時中の様子を後世に残す大きな仕事を新藤兼人 監督 は生涯貫き通した。
戦争を知らない私たちにも訴えている。
映画とは、残されるものであり、続くものだと改めて思う。










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